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むくむく通信 写真のはなし



むくむく通信<写真のはなし>
2004.5.1〜2008.10.10




(1)未来写真のキーワード―生命、自然、欲望―

現在とこれからの写真の主要なテーマは
<生命、自然、欲望>をめぐる3項目に要約されてくるのではないかと思います。

<生命>とは、こころを科学の領域としてとらえていくことの方向です。
これまでこころの領域というのはおおむね非科学的領域としてきました。

フロイト以後の心理学分野では、
臨床成果を積み重ねることで科学的立場を持つようになってきました。
これからは、幻想領域つまり妄想・幻覚・幻視など、
科学的に扱いにくいといわれてきたことをも含めていくことです。
これは科学的手法でもって非科学領域とされていた分野を、
解明していくという作業です。

個体を超えていく意識、というイメージがあります。
人間って合理性や道徳性に囚われることで、
自己というものを防衛していますが、
合理的・道徳的でないとされてきた領域を取り込んでいくことです。

写真表現の領域というものが、
いつもその外部にある社会科学や自然科学そして、
非科学的風評のなかで創られていくことを
取り込んでくることで拡大してきたのだとすれば、
この先におこってくるテーマは、
いまの世の中の関心ごととその先にあるものを
見えるイメージとして創生していくことになります。

<自然>とは、やはり現在の世の中の関心ごとです。
人間だけじゃなくて有機生命体として個体そのものがあるところ、
宇宙や地球という環境のなかでどのように整合性をもって
生命が維持されていくのか、という基本命題にたいして、
どのように対処していくのがよいのかなと思うことです。

わたしたち人間は文化という概念を生成させてきました。
その枠内で様々に考え行動する規範というものを作りあげてきました。
写真家という人は、写真という装置と手段をもって
この作りあげてきた内容を吟味し未来を予測していく作業をします。

これらはいつも自己矛盾を含みながらの作業となるように思います。
<自然>の方向へとは、わたしたちの日常にある
<文化>という枠を外していくこと、
可能であれば原初生命体のレベルで感じていくことです。

<欲望>とは、
情動つまり快感・不快感という感情レベルが生成されてくる処についてのイメージです。
わたしたち人間も含まれる有機生命体には
生命維持階層のシステムとして内分泌系、免疫系、神経系の
三系の構造に区分されていますが、
どうも欲望という情動はその基底の内分泌系に由来するようです。
その欲望というものをどのように開放してあげることができるのか、
というのがこれからの写真のテーマです。

写真がこころの深〜いその場所に触れてしまうときっていうのが、
深い感動を共有できる場面なのではないかなと思います。

これからの写真表現を考えていくにあたって、
わたしはこの3つのキーワードを手がかりにしながら、
あらためて「写真」がこれまで表現しようとしてきた
社会の表層構造(政治・経済、芸術、宗教の総合)に
アプローチしていくことが必要ではないかと思っています。



2005年08月26日
フォトハウス京都の仕事



フォトハウス京都です。

フォトハウス京都が創立されたのは1984年11月です。
当時は、フィルム写真しかなかったころですが、シリアスフォトの流れがあり、
オリジナルプリントの概念が、定着されてくるころでした。

シリアスフォトとは、写真作家の制作態度とでも云えばいいでしょうか。
写真を商業として使用するのではなく、
また、アマチュアリズムでお遊び芸として写真を愉しむ、というのでもなく、
写真で自分表現をするという流れのなかに位置づけることができると思います。

その考えのなかで、オリジナルプリントとは、
写真を絵画や版画のように作品として作り上げるプリントだといえばいいでしょう。

写真が、絵画や版画と同じように美術館にコレクションされる。
日本においても写真専門の美術館構想が起こりだし、
美術館に写真セクションを設ける企画が考えられてきたころ。

フォトハウス京都は、作家のための写真制作の方法を研究し、
ワークショップを開催することを目的の一つに掲げました。
具体的には、1985年から始めた「ゾーンシステム講座」では、
オリジナルプリント制作のノウハウを講座化したものでした。

現在は、デジタル写真が主流になってきた時代です。
フィルムからデジタルへの過渡期でもあります。

フォトハウス京都は、フィルムとデジタルの過渡的現状に、ワークショップを組んで、
これからの写真の方向を作っていくことを、目的の一つとしています。
そのなかで、写真文化のあり方を定着させていきたいと考えています。



2009.7.19